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東京優景 〜TOKYO “YUKEI”〜

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#55 御茶ノ水から根津へ 〜都会の花と緑を訪ねる〜 (千代田区・文京区ほか)

 2013年6月1日、神田淡路町交差点付近から外堀通りを北へ歩き始めました。この日は昼前までは日が射す天候でしたが徐々に雲が増えて、明るい曇天下での彷徨となりました。旧淡路小学校の跡地を再開発して建設された「ワテラス」の高層ビルが日々変化を続ける大都会の態様を象徴していました。橋の両端を高架で中央快速線と中央・総武線と鉄路がぞれぞれ貫ける昌平橋は、対照的に歴史を感じさせる佇まいを見せていまして、江戸から東京へ、時代を重ね成長してきたこの町の発達史の縮図を見るようです。

ワテラス

ワテラス
(千代田区神田淡路町二丁目、2013.6.1撮影)
昌平橋

昌平橋南詰
(千代田区神田淡路町二丁目、2013.6.1撮影)
不忍池弁天堂

不忍池・弁天堂
(台東区上野公園、2013.6.1撮影)
不忍池

不忍池の景観
(台東区上野公園、2013.6.1撮影)

 昌平橋交差点で外堀通りは西へと分かれて、その北への延長上の都道(昌平橋通り)を進みます。この道筋は西側の本郷台地の裾を辿るように進んでいまして、台地上には神田明神や湯島天神が鎮座しています。交差点名も「神田明神下」から始まり、「湯島中坂下」や「天神下」と、坂を下りた場所であることを示す名称が続いていきます。通りの両側には中小のオフィスビルや商店などが連続していまして、一見してここが台地の末端であることは分かりにくくなっています。交差点から西方を見て初めて坂道に気づきます。東京は江戸の時代から続く情調に満ちた坂道が多いことでも知られています。近年そうした坂道が注目されることも多くなりましたが、そうした坂道のある風景は、地形の特性に合わせて生活の場を確保してきた知恵の結晶でもあります。

 天神下交差点を過ぎて程なくしますと、池之端一丁目交差点で通りは不忍通りに合流します。その先には上野恩賜公園を象徴する自然のひとつである不忍池があります。不忍池は、西側の本郷台地と東側の上野台地(動物園や博物館などがある部分)とに挟まれた谷合に形成された自然の池です。江戸時代に上野台に寛永寺が建立され、琵琶湖に見立てられた池には弁天島が造られ、現在でもランドマークのようにして立つ弁天堂が造営されました。上野の山の穏やかな緑を背景に、ハスの葉が繁茂する池はとてもみずみずしい印象です。ハスの花の季節はまだ先でしたが、アジサイの花がここかしこに涼やかな色彩を添えていまして、夏日となったこの日の蒸し暑さを緩和させてくれていました。

根津一丁目交差点

根津一丁目交差点
(文京区根津一丁目、2013.6.1撮影)
根津神社

根津神社・鳥居
(文京区根津一丁目、2013.6.1撮影)
根津神社

根津神社・つつじ苑
(文京区根津一丁目、2013.6.1撮影)
根津神社

根津神社
(文京区根津一丁目、2013.6.1撮影)
根津神社

根津神社・わずかに残っていたつつじの花
(文京区根津一丁目、2013.6.1撮影)
旧古河庭園

旧古河庭園の景観
(北区西ヶ原一丁目、2013.6.1撮影)

 不忍池の西側を抜ける不忍通りをさらに北へ、根津界隈まで至りますと、これまでより建物の密度がやや低下して、低層層部に庇を出した店舗併用住宅が連続するような土地利用もまた目立つようになります。根津一丁目交差点周辺はそうした穏やかな街並みの商店街となっていまして、下町的な情趣を醸し出していました。その根津一丁目交差点の北西に鎮座する根津神社は、社伝によりますと、その創建はおよそ1900年前、日本武尊によるものともいわれる、都内屈指の古い由緒を持ちます。境内は本郷台の末端の崖に沿うように設けられており、根津神社を有名にしているつつじ苑は、その斜面を覆うようにつつじが植栽されているものです。つつじの時期は4月下旬ということで花はほとんど見られませんでしたが、その斜面は美しいつつじの緑によって包まれていまして、また違った趣が見事でした。

 根津神社を後にして、本郷通りに出た後、地下鉄南北線を利用し北区にある旧古河庭園へ。こちらは色とりどりのバラがまさに見ごろを迎えていました。初夏の燃えるような新緑の季節を過ぎて、梅雨入りを前に成熟した木々の緑をより引き立てるように咲くこの季節の花は、やがて訪れる盛夏をの猛々しさを予感させました。

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