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東京優景 〜TOKYO “YUKEI”〜

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#66 神楽坂上から早稲田へ 〜都心近傍の町並みをゆく〜 (新宿区)

 2017年9月30日、江戸川橋駅南の山吹町あたりから町歩きを開始しました。このあたりの区境は神田川より南側へ張り出していまして、改修される前の蛇行していた往時の河道を反映したものとなっています。周辺はビルによって埋め尽くされていまして、低地に水田が広がっていた、かつての風景を思い起こさせるものは何もありませんが、区界に沿って湾曲する路地が、唯一のこの土地の昔を記録する事物であるように感じられました。

区境の町並み

区境の町並み
(文京区関口一丁目、2017.9.30撮影)
江戸川橋通り・渡邊坂

江戸川橋通り・渡邊坂
(新宿区中里町、2017.9.30撮影)
早稲田通りの景観

早稲田通りの景観
(新宿区矢来町、2017.9.30撮影)
神楽坂の景観

神楽坂の景観
(新宿区神楽坂六丁目、2017.9.30撮影)
赤城神社

赤城神社・鳥居
(新宿区赤城元町、2017.9.30撮影)
赤城神社

赤城神社
(新宿区赤城元町、2017.9.30撮影)

 牛込天神町交差点に向かって進む江戸川橋通りは、神田川沿いの低地から台地上に上る坂となります。同交差点の一つ北の交差点までは渡邊坂、そこから先は地蔵坂とそれぞれ呼ばれているようです。渡邊坂は、藩政期にこの付近に旗本の渡邊源蔵の屋敷があったことに寄るものであると、現地の標柱に説明されていました。早稲田通りを左折し、神楽坂界隈へと歩を進めます。大久保通りから外堀通りへ、ゆるやかに下る神楽坂は、時間帯によって一方通行の方向が変わる、全国的にも希有な交通規制が行われています。歩道が広く採られ、車道が狭い構造上の要因と思われますが、都心方向降りていく通りの風景はとてもしなやかで、神楽坂の町並みを洗練されたものにしていました。

 通りを北へ逸れて、新宿区北東部・牛込地域の鎮守である赤城神社へ。再生プロジェクトが行われて、モダンな佇まいとなっている境内は、穏やかな社叢に包まれて初秋の青空の下に凛とした社殿が印象的でした。赤城神社は老朽化に伴う社殿の建て替えのため、神社資産の土地売却を伴わない定期借地権(70年)の等価交換し、神社の建替えとマンション建設を行うという事業(前述の再生プロジェクト)が実現しています。神社は台地上の北端に位置しており、境内からは台地下の町並みへの眺望が利きます。周辺は細い道路が貫通する穏やかな住宅地となっており、神楽坂の繁華な雰囲気との間にあって、赤城神社の風景はランドマーク的な位置づけにあるようにも目に映りました。赤城神社から台地下へと下る赤城坂を歩き、赤城下町を東西に進む路地を西へ辿り、江戸川橋通りへと戻りました。その交差点は先に紹介した、渡邊坂と地蔵坂とが迎合する場所でした。

赤城神社からの風景

赤城神社境内からの風景
(新宿区赤城元町、2017.9.30撮影)
赤城坂の景観

赤城坂の景観
(新宿区赤城元町、2017.9.30撮影)
北野神社

北野神社
(新宿区天神町、2017.9.30撮影)
早稲田通りの景観

早稲田通りの景観
(新宿区東榎町付近、2017.9.30撮影)
弁天町交差点

弁天町交差点・拡幅の進む外苑東通り
(新宿区榎町、2017.9.30撮影)
漱石山房記念館

漱石山房記念館
(新宿区早稲田南町、2017.9.30撮影)

 北野神社の境内を掠めながら再び早稲田通りに出て、今度は西へと通りを進んでいきます。外苑東通りが拡幅事業中の弁天町交差点を南へ折れて、牛込保健センター前を西へ歩き、夏目漱石が晩年を過ごした「漱石山房」の旧地に建設された区立漱石山房記念館へと辿り着きました。記念館内には、戦災で焼失した漱石山房と書斎が再現されています。記念館自体は現代的な外観を呈していまして、漱石に関係する様々な資料を常設展示するほか、関連する企画展や講演会などを行う場として供されています。漱石山房記念館の周辺は漱石が生まれ育った近隣で、漱石の生い立ちやその足跡を偲ぶことができる「漱石の散歩道」という散策ルートも設定されて、多くの人々が記念館や地域を訪れていました。

 その漱石の散歩道を跡づけながら、感通寺の門前に出て、当地の名主であった夏目漱石の父が自身の名を採ってそう呼んだことが定着したとされる「夏目坂」を北へ下ります。三度早稲田通りへ戻る一帯は人通りも商店も多く、活気のある印象です。早稲田通りへ出て、程なくして到達する穴八幡宮下の馬場下町交差点の周辺は、近接する早稲田大学の存在もあって、より一層飲食店や商店の密度が高い様子でした。穴八幡宮の参道の石段を上り、市街地の中にあって、しめやかな佇まいを保つ境内の静かさがとても心象的に目に映りました。

感通寺門前

感通寺門前の風景
(新宿区喜久井町、2017.9.30撮影)
夏目坂通りの景観

夏目坂通りの景観
(新宿区喜久井町、2017.9.30撮影)
馬場下町交差点

馬場下町交差点
(新宿区馬場下町、2017.9.30撮影)
穴八幡宮

穴八幡宮
(新宿区西早稲田二丁目、2017.9.30撮影)
穴八幡宮境内

穴八幡宮境内の景観
(新宿区西早稲田二丁目、2017.9.30撮影)
穴八幡宮鳥居越しの町並み

穴八幡宮鳥居越しの町並み
(新宿区西早稲田二丁目、2017.9.30撮影)

 穴八幡宮を後にして、馬場下町交差点で早稲田通りから分岐する諏訪通りを進み、戸山公園の箱根山地区方面へと進みました。運動広場などがある一帯を過ぎて、その先にある花の広場では、バラの花が色とりどりに開いていました。市街地にあって貴重な緑地となっている同公園は、藩政期には尾張徳川家の下屋敷があった場所であり、近代は陸軍戸山学校が開設されるなど、終戦まで軍関連の施設が立地していた場所でした。園内にある新宿区内最高所である「箱根山」へと歩を進めます。

※内容は次項へと続きます。


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