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東京優景 〜TOKYO “YUKEI”〜
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#65 青梅丘陵の新緑を歩く 〜穏やかな緑の森を訪ねる〜 (青梅市) 2017年5月28日、新緑がいよいよ鮮やかになった季節に、JR青梅駅から多摩川の北側に展開する青梅丘陵へと向かいました。多摩川が山間から平地へと遷移する谷口に位置する青梅市街地は、多摩川がつくる河岸段丘面に展開し、急崖となっている段丘崖を下った先まで穏やかに広がっていました。昭和レトロの雰囲気を濃厚に残す旧市街地の町並みを一瞥しながらJR線の鉄路を越える道路を進み、青梅丘陵の東端一帯を園地とする永山公園へと進みました。丘陵を駆け上る坂道や階段を上り、葉桜となった桜見本園を横切り、青梅鉄道公園を一瞥しながら、森の中へと続くハイキングコースへと向かいました。
この日は薄曇りで時折雲間に青空がわずかに覗く陽気で、間近に迫る入梅の雰囲気を感じさせました。初夏のきらめきに満ちた若葉の季節を過ぎて、新緑は徐々にその濃さを増して、空気に満ちたみずみずしさをしなやかに受け止めているような穏やかな緑を葉に湛えているように感じられました。コースの途中に鎮座する金刀比羅神社の境内には安山岩製の「十二方角碑」(市指定有形文化財)がありました。碑は12角形に加工されていまして、一つひとつの面に、それぞれの方角に望むことができる山名などの景勝地や距離が刻まれていました。永山公園から青梅の森と呼ばれる向かうルート上には、所々に富士山や筑波山を望むことができる場所がありましたが、この日はそうした山々を望むことができませんでした。 緑に包まれる美しい森の中を歩き、鮮やかな新緑に癒やされます。東方向に視界が開ける「展望広場」からは、かすかに新宿方面への高層ビル群を遠望することができました。青梅を経て甲府盆地へと続く青梅街道の起点はその新宿です。藩政期以降、都心と多摩地方とをむず部主要幹線道路の一つとして機能してきた青梅街道の拠点として栄えた青梅から望むその副都心のビル群は、武蔵野の広大な大地の彼方に燦然と屹立していまして、江戸開府から世界都市へと昇華した東京都その周辺地域の数百年間を凝縮したような光景のように目に映りました。
瑞々しい新緑の木々と、時々斜面を支配する杉林とが混交する「青梅の森」の色彩に目を奪われながら遊歩道を下り、丘陵を刻む霞川の小流に沿った穏やかな住宅地を通過して成木街道(都道28号)に出ました。その都道を鉄道公園入口交差点から青梅四小前交差点まで歩いてから右折し、城山通りへと歩を進めます。飯能市から入間市へと連なる加治丘陵の南端に当たる丘陵の端、緑に寄り添う住宅地となっているエリアを辿り、その里山の谷地に開かれた吹上しょうぶ公園へ。丘陵の間のなだらかな低地帯に植栽された菖蒲はまだその多くが開花しておらず、公園は無料開放されていましたが、一部に可憐な花を付けている株もあって、仲夏に向かって青系の花が目立つようになっていく四季の移ろいを感じさせました。 吹上しょうぶ公園からはさらに閑静な山並み沿いの地域を北へと歩いて、城山通りから吹上中学校西の小道に入り、柔らかな印象の竹林が繁茂する小さな峠を越えた先の塩船観音寺を目指しました。塩船観音寺は、大化年間(645〜 650)に、若狭国の八百比丘尼が、紫金の千手観音像を安置したことに始まるとされる古刹です。天平年間(729〜 749)に、行基がこの地が小丘に囲まれ船の形に似ているところから、仏が衆生を救おうとする大きな願いの船である「弘誓の舟」になぞらえ、塩船と名付けたとも伝えられています。茅葺屋根の山門(国重文)をくぐり、阿弥陀堂を経てやはり茅葺屋根の本堂(国重文)へ、丘陵に寄り添うにように立ち並ぶ堂宇を訪ねます。境内の奥の斜面にはたくさんのつつじが植えられていまして、最盛期は多くの参拝客を集めます。観音像が見守る丘陵を上り、霞丘陵自然公園となっている森の中を辿って、開基当時は人煙希な山中で会ったと思われる豊かな自然を満喫しました。
塩船観音寺からは、中世神社建築として貴重な遺構を残す春日神社を経て、JR河辺駅へと進みました。丘陵に囲まれて、畑や茶畑などが点在した昔ながらの雰囲気を残す住宅地から、青梅線沿線で市街化が進んだエリアへと移り変わる景観に、首都圏郊外における住宅都市としての青梅の現況を垣間見ました。多摩川上流の要衝として発達し、豊かな自然に隣接しながら都市化の影響を受けてきた青梅の町並みは、水と緑とを間近に享受することのできる潤いに溢れていました。 |
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