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東京優景 〜TOKYO “YUKEI”〜
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#87 豊洲周辺を歩く 〜産業エリアから再開発の舞台へ変貌した地域〜 (江東区・中央区) 2020年9月14日、コロナ禍によって制限されていた移動が徐々に緩和されつつあった時勢になり、久しぶりに県外でのフィールドワークを行いました。行き先は江東区豊洲です。2018年10月に中央卸売市場築地市場が移転し、話題となったこのエリアは、地下鉄有楽町線の開業から業務地域・超高層マンションの建設などが加速して、その様相を大きく変貌させてきました。地下鉄豊洲駅近傍にあって、その象徴的存在の一つである豊洲センタービル周辺のビル群を一瞥しながら、海の方向、豊洲公園方面へと歩を進めました。
かつての造船所跡を再開発した「アーバンドック」の愛称で呼ばれる街区には、「ららぽーと豊洲」や水上バス乗り場が建設され、多くの集客を得る施設としてそれらは機能しています。海側はデッキ状に整えられていまして、晴海から豊洲の、埋め立てによって臨海部に開発されたウォーターフロントの地域を望む格好となっています。宙空を行くゆりかもめ建設中のビルを正面にららぽーとの前を通過して、豊洲市場のある一角へ、歩いて行きます。かつては火力発電所や複数の企業の工場などが立地したこの地区は、豊洲市場の開場によって一変し、現在では博物館や企業ビル、高層マンションなどが豊洲の中心地区から連担して広がる街区へと変わりました。 海岸沿いは遊歩道を設えた公園となっていて、豊洲公園など複数の公園が沿岸部のランニングコースと有機的につながって、「豊洲ふ頭内公園(豊洲ぐるりパーク)」の名称で供用されています。そのランニングコースとなるルートを海沿いに進みながら、晴海大橋(有明通り)、そして豊洲大橋(環状二号線)の下をくぐっていきます。海を挟んだ対岸の晴海エリアのビル群は壮観で、さらに南へ移動していけば、東京タワーの遠景や、レインボーブリッジを介したお台場方面への視界も良好となっていきます。コロナ禍で延期はなりましたが、東京オリンピックの選手村のビル群も眺めることができました。晴海と豊洲の間の海には、貨物路線の廃止後も残された晴海橋梁の遺構も残って、産業地域から再開発の只中へと急激に変わってきた地域の歴史を今に伝えていました。
豊洲ふ頭の東側へと回り込むと、南側の有明地区との間を隔てる東雲運河に、緑がこんもりとした、帯状の土地があるのが確認できます。この運河の間の緑地帯のような構造物は、旧東京港防波堤の遺構です。豊洲が埋め立てられ、その沖合の豊洲ふ頭や有明、お台場もなかった頃に、東京港の内港と外港とを隔てるために建設された防波堤は、その後の埋め立てによって、現在のような運河の間に連なる緑地帯然としたものとなったわけです。東京湾臨海部の変化の激しさを残す遺物をまたひとつ確認した後は、豊洲市場の内部を見学しつつ、緑化された屋上様子を確認し、旧築地市場と豊洲とを結ぶ環状二号線に出て、晴海へと歩きました。 清掃工場の青い塔を見ながら、オリンピックの選手村の建物が建ち並ぶ横を通過します。このエリアも多くの高層マンションが林立していまして、皿子交差点を左に折れて、高輪台町町会のある通りを進みます。通りの周辺はまた中低層のマンションや住宅が建ち並ぶ穏やかな住宅地となっていまして、中央区銀座をはじめとした都心エリアに近接した立地を活かした住宅供給地域としての側面が強い印象を受けました。さらに運河をひとつ渡った先の勝ちどき地区になると、地下鉄大江戸線も通過することからそうした傾向がさらに顕著となります、そんな中にある東陽院には、江戸時代後期の戯作者として著名な十返舎一九の墓が静かに佇みます。もとは浅草にあった同寺院が、関東大震災被災を機にこの地に移り、同時に墓も移転されたものとのことです。都市の成長や変化を促すものとして、時に大規模な災害や戦災などが大きく影響することがありますが、こうした著名人の墓所一つをとってもそうした事象を照明するものとなり得ることを改めて実感することとなりました。
豊洲から歩き始め、複数の埋め立て地によって形成された街区を辿った今回の彷徨は、大都市がその途方もなく大きい成長の熱量を地域の拡大に燃焼させ、継続的に土地を改変させ、時にその速度が急激すぎるが故に、ほんの少し前のものでさえ一瞬にして過去のものへと返させてしまうすさまじさを感じさせるものであったように思います。こうした風景に接する度に、やはり都市は常に何かを壊して前進していく性質を帯びているのだと痛感させられます。 |
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