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関東の諸都市・地域を歩く
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#115 前橋の中心市街地の風景 〜かつての繁栄を残す町並み〜 2016年11月13日、沼田市街地の散策の後は、両毛線での帰路に前橋の市街地に立ち寄りました。JR前橋駅前は広いバスプールが設けられているものの、北口にある商業施設「エキータ」を覗けば目立った商業集積が認められない、県庁所在都市の中心駅前としてはかなり物足りない印象です。このことについては、中心市街地からやや離れているとか、新幹線駅で県内随一のターミナルである高崎駅にその中枢性をゆずっているとかといった説明がなされます。しかしながら、高度にモータリゼーションが進行した県下にあって、商業機能が郊外のロードサイド型店舗や大型ショッピングモールに移行して久しいことがその要因のすべてであると思います。域外からの訪問者や通勤通学流動の受け入れにほぼ特化した無機質な駅前を出発し、中心市街地へと向かいます。
前橋市の人口は33万4千人あまり、高崎市(約37万人)に次いで県内第二位の規模となります。藩政期は中規模の城下町として都市基盤を維持し、近代からは主要輸出品であった生糸の生産・取引により「生糸の市(いとのまち)」として興隆してからは、群馬県内における中核都市として成長を遂げました。駅前のシンボルストーリーとであるケヤキの並木の下を歩きますと、国道50号との変則交差点(五差路)へと到達します。ここから西、県庁前までの区間は前橋市街地においても最も高層建築物の密度が高い一帯で、半生記から近代にかけても目抜き通りとして栄えてきた道筋です。こちらも穏やかなケヤキが植栽されていまして、訪れたこの日は黄色から橙色へと鮮やかに色づいていまして、初冬の街を彩っていました。 歩道橋をわたって北へ、中央前橋駅方向へ進みますと、北へ向かって下り坂となっていることが分かります。さらにその先には広瀬川が穏やかに流れています。中央前橋駅前では暗渠になっていますが、県道4号が越える橋の名前は「久留万(くるま)橋」で、これは県名ともなっている郡名の「群馬」にルーツがあると思われる語感を持っています。ここから北西へ、広瀬川はしなやかなヤナギの並木を両岸に配しながら、みずみずしい水辺の風景を形成していきます。前橋は「水と緑のまち」を標榜していまして、そのたおやかな景観は、そうした水と緑が織りなすうるおいのある都市というイメージをまっすぐにトレースしているように感じます。川辺には前橋出身の詩人・萩原朔太郎の詩碑などが設置されて、快い散策を楽しめるようになっています。諏訪橋西詰交差点で交わる県道3号沿いには立町大通り商店街のアーケードを伴った町並みと、国道50号方向へつながる千代田通り商店街の風景とを確かめることができました。
広瀬川の川筋はかつて利根川の本流が流れていた氾濫原で、広瀬川はその低地帯に開削された用水路です。久留万橋へ下った坂道も、そのいにしえの利根川が大地を浸食した痕跡です。交水堰と呼ばれる堰は水利のために設けられたもので、それは近代には水車による動力源や、工業用水の取水元として活用されました。比利根橋から南へ続く弁天通商店街は、弁天様として親しまれる大蓮寺の門前に発達した商店街で、緩やかにカーブを描く通りにアーケードがかぶせられた風景が昔懐かしい雰囲気を醸し出します。立町大通り商店街をわたりますと、中央通り商店街へと続きます。スズラン百貨店も近傍となり、商店の密度も大きくなっていくように感じられる一方で、休日の午後という時間帯でも人通りは多いとは言えない状況で、車道を行き交う多くの自動車の列とは対照的に目に映りました。 商店街の様子を一瞥した後は、前橋公園と臨江閣、るなぱあくなどのある利根川近傍のエリアを歩きながら、県庁前へと進みました。県庁のある場所は前橋城の本丸跡で、敷地を取り囲む土塁のみが往時を偲ばせています(他に残る遺構としては、本町二丁目の車橋門跡だけです)。国道50号へとつながる通りを歩きながら、相変わらず多く行き過ぎる自動車と、人のまばらな歩道との対比を味わいながら、前橋駅へと戻りました。
前橋の中心市街地における空洞化が叫ばれ、その活性化への模索が進められるようになってから久しいですが、そもそも町場は住民の多くが必要として存立し発展してきた場所であるはずです。現在の状況はそうしたニーズを満たすものとはなっていないということなのでしょう。かつての賑わいを取り戻すための道のりはいまだに厳しいものであることを、この日の市街地散策で実感しました。 |
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