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関東の諸都市・地域を歩く


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#116 紅葉の養老渓谷をゆく 〜なめらかな渓谷を訪ねるハイキング〜

 2016年12月3日、この年の11月26日に引き続き、千葉県市原市の五井駅を訪れました。この日の目的地は、五井駅から出発するローカル鉄道・小湊鐵道線で向かう養老渓谷です。房総半島内陸、養老川の上流に位置するその渓谷は、市原市から大多喜町にまたがるおよそ6キロメートルほどの間に、滝や渓谷美を探勝できるハイキングコースが設けられています。五井駅で車両が増結された列車は養老川が作る広大な沖積地の只中を進みながら、上流の山奥へと進んでいきます。散策の拠点となる養老渓谷駅前は紅葉狩りを目的とした多くの人々で賑わっていました。まずは、渓谷の中でも随一の美観をもつ「粟又(あわまた)の滝」へ、バスで向かいました。

小湊鐵道沿線の田園風景

小湊鐵道沿線の田園風景
(市原市内、2016.12.3撮影)
養老渓谷駅

小湊鐵道線・養老渓谷駅
(市原市朝生原、2016.12.3撮影)
粟又の滝

粟又の滝・上部の風景
(大多喜町粟又、2016.12.3撮影)
粟又の滝

粟又の滝
(大多喜町粟又、2016.12.3撮影)
滝めぐり遊歩道コース

滝めぐり遊歩道コースの風景
(大多喜町小沢又、2016.12.3撮影)
小沢又の滝

小沢又の滝
(大多喜町小沢又、2016.12.3撮影)

 粟又の滝は養老渓谷の上流、長さ100メートルに渡り、なめらかに滑り降りるような滝です。ハイキングコースは滝がちょうど流れ落ちるあたりに出て、その流れにより沿うように下流に進み、滝壺の先へと進んでいきます。冬の穏やかな日射しそのままの緩やかさを醸した水流は、森から供給される冷気と、太陽のあたたかい日射しとに接していっそう美しさを増して、周辺の紅葉と絶妙なコラボレーションを見せていました。粟又の滝から下流へは、「滝めぐり遊歩道コース」と呼ばれる散策路が整備されています。川底を洗う流れはどこまでも清冽で、両岸の森はどこまでも静謐で、海と山とが近距離で交わる景勝で彩られる房総の自然を象徴していました。川が削る谷には砂岩と泥岩とが交互に堆積した地層が観察できる露頭も多く、地質学的にも貴重な景観が連続していきます。散策路の終点近くには、案内板に「幻の滝」と記された滝へ立ち寄りました。「小沢又の滝」とも紹介されるその滝は、木々に埋もれるように流れ下っていまして、深い谷を刻んでいました。

 滝めぐり遊歩道コースをたどり、川筋から県道方向へ戻りますと、水月寺の境内へと誘われます。水月寺は初夏にはツツジの花が咲き乱れることで知られています。県道沿いを下流方向へ、徒歩で戻ります。周辺は蛇行する養老川が形成した河岸段丘状の低地が広がっていまして、小規模ながら田畑が形成されています。山際には集落があって、昔ながらの山間の農村的な風景が連続しています。県道の旧道を老川十字路へと入り、国道465号を西へと歩を進めます。国道の橋の上から眺望する養老川も、滝めぐり遊歩道コースを歩んでいたときと同じような渓谷美が展開しており、鮮やかな色づいたカエデが華やかさを添えていました。そこから人家のない国道の橋を歩くこと約40分、「筒森もみじ谷」と呼ばれる小さな谷間へとたどり着きました。谷筋に水田が開かれた集落の奥に、細流に沿って穏やかに落葉樹が影落とす渓谷がありました。12月に入り紅葉の見頃をようやく迎えた景色に、温暖な千葉の自然を感じました。

水月寺

水月寺
(大多喜町小沢又、2016.12.3撮影)
養老川河谷の水田

養老川河谷の水田
(大多喜町小沢又付近、2016.12.3撮影)
養老渓谷

国道465号の橋から見た養老渓谷
(大多喜町小田代、2016.12.3撮影)
筒森もみじ谷

筒森もみじ谷
(大多喜町筒森、2016.12.3撮影)
弘文洞跡

弘文洞跡
(大多喜町葛藤、2016.12.3撮影)
養老渓谷駅

イルミネーションが輝く養老渓谷駅舎
(市原市朝生原、2016.12.3撮影)

 筒森もみじ谷を探索した後は老川十字路付近へと戻り、バスで弘文洞入口まで進んで、中瀬遊歩道とよばれるハイキングコースへと足を踏み入れました。こちらも川底をゆるやかになぞるように流れる養老川に沿って遊歩道が整えられていまして、その美しい渓谷美を心ゆくまで満喫することができるようになっています。養老川の河床も露頭で認められる砂岩と泥岩の互層を浸食しているので、削られやすい砂岩と削られにくい泥岩とが層状に連続するようすを確認することができます。時折飛び石で対岸に渡りながら遊歩道は養老川に寄り添って進んでいきます。弘文洞跡は、千葉県上総地域で特徴的に見られる「川廻し」(河川が蛇行する部分を短絡して水路をつくり、旧河道を農地等に利用するもの)によってつくられた隧道の上部が崩落したものです。

 その後も「出世観音」と呼ばれる養老山立國寺などを訪問しながら、養老渓谷周辺のハイキングして、初冬のしなやかな山並みの風景を目に焼き付けました。養老渓谷駅に戻った頃にはすっかり暗くなっていまして、ささやかなクリスマスイルミネーションが輝く駅舎にて列車の出発をしばし待ちました。


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