Japan Regional Explorerトップ > 地域文・関東甲信越地方 > 関東の諸都市地域を歩く・目次
関東の諸都市・地域を歩く
←#156(水戸編)のページへ |
#158(幸手編)のページへ→ |
|||||||||||||||||||||
#157 和紙の里、小川町の里山をゆく ~春の歓喜に包まれる町並みと自然~ 2019年3月24日、早朝に地元太田駅を出発し、バスで熊谷駅、森林公園駅へと乗り継ぎ、最後は東上線で小川町駅へと進みました。東上線は池袋駅まで直通する電車はこの駅までで、ここから寄居駅までの区間とは系統が分離されます。駅前には「和紙の里」と題された観光マップが掲出されていまして、ここが「細川紙」が国の重要無形文化財、ユネスコの無形文化遺産の指定を受ける有数の和紙の産地であることをアピールしていました。JR八高線の駅もある当駅は、小川町がこの地域における交通の要衝であることを印象づけます。槻川と兜川が合流する小盆地に形成された町場は、川越から秩父方面へと抜ける往還に沿って形成されており、その旧道沿いの駅前へ進む道(花水木通り)を軸に、昔ながらの町並みが残されていました。
国道254号の指定を受ける道路沿いの中心市街地をしばらく歩き、国道に沿って北へ、酒造会社の蔵や煙突が見える風景を右手に見ながら通りを西へ折れて進んできます。小川町にはいくつかの酒造元があって、酒の産地としても知られています。武蔵野小京都とも形容される静かな家並みを歩き西へと歩きますと、道はやがて丘の上へと続いて、小川町の市街地を俯瞰できる場所まで誘われました。外秩父山地のゆるやかな山並みに抱かれるようにしてある風景はとてもしなやかで、自然に包まれながら、それらを利用し生活してきた地域の姿をそのまま映しているように感じられました。まっすぐ続く八幡神社の参道を進み、杉木立の下の社殿の前へ。1333(元弘3)年創建と伝わる八幡神社には、鎌倉幕府最後の将軍である守邦親王が勧請したとする伝承が地域の歴史を物語ります。 県指定史跡の穴八幡古墳の見える道を下り、春の花が咲き始めた丘の風景を抜けて、県道11号沿いの、中心市街地から続く町並みを横切り槻川沿いの道へと一気に歩を進めます。堤防上の散策路には、開花を間近に控えたソメイヨシノ並木があって、対岸の芽吹き前の穏やかな山並みと重なります。そんなたおやかな稜線の山々の表情そのままに、槻川の流れはゆるやかに河床を洗っていました。日の出橋で右岸に渡り、堤防上の道を辿りますと、川を挟んだ向かい側の小川の家並みが美しく眺望できます。1690(元禄3)年の絵図には既に見えるという栃本堰は、明治期に本格的な堰として完成しています。地域の灌漑や生活用水が堰から取水され、地域の生業を支えました。付近は栃本親水公園として整えられていまして、みずみずしい河畔林の下、快い散策を楽しめるようになっていました。水車小屋も再現されて、和紙の里らしい風景にも出会えます。堰の下にある飛び石で川を渡り、川と山並みがつくのびやかな景観を探勝しました。
槻川沿いを離れ、県道11号のバイパスを渡った先、右岸側の山裾を進む小道へと入ります。八高線の踏切の手前には、中世来のゆかりを持つ円城寺が佇みます。境内にはすぐれた意匠を持つ二連の板碑があり、地域の民俗史を知る上で貴重な文化財となっています。槻川へ注ぐ小流を越えて、「見晴らしの丘公園」へと続く山道へと進みました。周囲の山々を覆う木々の枝先には、徐々に新芽が早緑色を見せ始めていまして、まさに山笑う情景が認められました。雲一つ無い春zらから降り注ぐ日の光を受けた森はこの上のないやさしい明るさに満ちていまして、坂道を上る疲労を幾分か緩和させてくれました。ロウバイが美しい黄色の花を付けた公園内の展望台からは、眼科の小川盆地に広がる市街地のほか、外秩父山地の末端から比企丘陵へと連なる低い山並み越しに、榛名山や赤城山、関東北部の山岳地帯へと視界が広がり、関東平野の縁辺部における低地と丘陵とが交錯する豊かな自然景観を一望することができました。 見晴らしの丘公園から北側に山を下った先には、西光寺の堂宇のもとへ。境内には艶やかなシダレザクラがあって、満開を迎えていました。上品な桜色が春風に揺れる様は、筆舌に尽くしがたい情趣に満ちていました。そこから山の麓の林の下の斜面はカタクリの群生地となっていまして、こちらも薄紫色の可憐な花を付けた個体がいっぱいに花を付けていまして、早春のまだ淡い樹冠からこぼれる春の光に、しなやかな花びらを透かせていました。山に生えるソメイヨシノの一部は花を咲かせ初めているものもあって、いよいよ春本番へと季節が進む序章の雰囲気を存分に感じさせる光景でした。槻川沿いへと進む散策道を歩き、下里地区に入りますと、旧小川小学校下里分校の校地へとたどり着きました。2011(平成23)年3がつに廃校となった校舎は、山里の山と田んぼと集落とが広がる風景にとても馴染んでいまして、目の前をゆるやかに流れる槻川の佇まいそのままの長閑さに溢れていました。
小川町の散策の最後は、槻川の左岸の道を進んで、「道の駅おがわまち」へと向かう行程を経ました。道の駅には埼玉伝統工芸会館が併設されていまして、地域の資産である小川和紙の実演と体験が行われている他、多様な和紙の製品を購入することができます。小盆地に発達した町並みから川沿い、そして里山へと進んだ今回のウォーキングは、そうした自然の恵みを伝統工芸へと昇華させた、小川町のたゆみない克己の歩みそのままのしなやかさによって充足されていました。 |
←#156(水戸編)のページへ |
#158(幸手編)のページへ→ |
||||
関東を歩く・目次へ このページのトップへ ホームページのトップへ |
|||||
Copyright(C) YSK(Y.Takada) 2020 Ryomo Region,JAPAN |