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関東の諸都市・地域を歩く
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#75 南房総・白間津の風景 〜花畑に彩られる海岸の集落〜 南房総は早いところでは12月に入るとナノハナをはじめとしたさまざまな花が咲き始め、年明けとともに次々とさまざまな花が開いて、花摘みが楽しめる季節を迎えます。房総半島の南端、温かい黒潮の影響を受けてほとんど霜が降りることもなく、また北には房総丘陵が北西からの冷たい季節風の寒さをやわらげて、南房総では古くより厳冬期における花卉栽培がおこなわれてきました。近年では観光目的で盛んに花畑がつくられていて、1月に入りますと各地で次々に色とりどりの花が見られるようになります。2012年3月25日、そんな花に彩られる季節もそろそろ終盤を迎える時期に、南房総・白間津を訪れました。
内房を一路南へ、館山市の郊外を抜けて県道86号で丘陵地を越えて太平洋岸へ。国道410号に出てからは海岸沿いの穏やかな集落を通過しながら進みますと、「道の駅ちくら・潮風王国第3白間津花のパーキング」へと到達します。ここは駐車場のすぐ裏手まで照葉樹林の丘陵地が迫る場所で、そこから海岸までのわずかな平坦地が花、花、花で埋め尽くされています。花畑にはキンセンカやストック、ヤグルマギク、ポピーなどの花が植えられていて、温暖な南房総を象徴するような春らしい色彩に満ち溢れた風景が広がります。暖色の美しいグラデーションの先には、温かさに包まれているような、透明感のある太平洋の青が快く目に入ります。 花は水田に植えられています。花摘みの季節が終わりますと稲が植えられ、盛夏はのびやかな穂波に覆われます。いわば冬から春までの花の栽培は裏作というわけです。田には上述の花々のほか、ナノハナやソラマメも植えられていまして、冬でも温かい気候を生かした土地利用がなされていることが分かります。パーキングに周辺の集落をめぐる「路地花の里コース」という散策路が示された標識があったので、近隣を歩いてみることとします。車の行き違いができないような細い道が、水田の中を縫うように進んできます。田植えに備えて耕された水田が多い中にあって、キンセンカなどの花が育てられている水田も多く、大消費地を控えて成長した花卉栽培が地域に根差した産業となっているようすを観察することができました。
陽春の温かい風に吹かれながら、黒潮に抱かれる海辺の農村風景の中をそぞろ歩きます。地盤の隆起により形成された海岸段丘上に展開する集落は高さの低い平屋を中心とした瓦屋根の住居が多いようで、海に近く強風の影響を受けにくくしている結果ではないかと思い当たりました。地域の鎮守・日枝(ひえ)神社には国指定無形重要文化財である「白間津踊り」が伝わります。老若男女が総出で三日間行われるという祭事は漁村には珍しい壮麗で豪壮、にぎやかな大祭であるとのことです。身を寄せ合うような家々が立ち並ぶ集落の中を進み、国道を越えて海岸部へと歩を進めます。 もともと入江だった場所を彫り込んで港湾として整備したと目される白間津港は、釣り船がメインのローカルな漁港であるようです。港の入口には南房千倉大橋が架けられていて、海と隣り合わせの地域を象徴する存在となっています。橋の上からは房総丘陵の山並みから漁港の間に広がる白間津の集落を確認できるほか、磯海岸となっている沿岸風景から彼方の太平洋を一望できる絶好の眺望スポットとなっています。海から吹いてくる風はどこか暖かくて、南房総の山や里をゆるやかに駆け抜けていくように感じられました。 |
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