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シリーズ京都を歩く
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10.洛中洛外・桜花雅散 〜2010年京都桜遊歩〜 |
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第二十七段 洛中の桜をめぐる 〜千年の都の桜に酔う〜 2010年4月10日は朝から穏やかな春空が広がる京都の市街地を桜をめぐり歩き通しました。ぱっと花を開いて春を最高潮に彩り、切なく散る桜の態様は、日本の伝統的な美意識の一つである「わびさび」を象徴するものとして多くの人々を魅了し、心を打ってまいりました。千年の都と称される京都では、遷都より連綿と紡がれてきた歴史がどの街角にも蓄積されており、どの建造物も長い時間の中で衰微と隆盛とを経験していると言っても決して過言ではないでしょう。そうした史実を思う時、京都で今年も変わらずあでやかな色を風に伝えている桜の姿は、とてもかけがえのないもののように思うわけです。 平野神社は、「平野の夜桜」として知られる桜の名所です。大和国高市郡今木の今木神を784(延暦3)年の長岡京遷都の際に移し、続く平安遷都の時に現在地に遷座したという古い歴史を持つ神社には、現在、ソメイヨシノのほか、ベニシダレサクラやヤマザクラの種類と思われる桜など多種多様な桜があって、それぞれの桜色を存分に染め上げていました。
平野神社を出て、近傍にある、梅の季節を終えて静かに春の喜びに浸っているような“天神さん”(北野天満宮)を参拝した後、ちょっとした門前商店街を形成している中立売通(北野天満宮門前へと通じた旧市電通りであったようです)を歩き、七本町通に山門が面する立本寺へ。1341(暦応4)年に日蓮聖人の孫弟子にあたる日像上人により開山されたという立本寺もまた、破却や焼失、移転などを経た過去があります。著名な寺院の多い京都にあって、日常的に近隣の人々が憩う生活に密着した風情の境内は、はらはらと舞うソメイヨシノのしっとりとした桜色で彩られていました。この季節、街を歩いていてもいたるところで桜の花に出会います。いわゆる名所ではない生活空間にある桜を目にすると、心がなごむとともに、この国にとって桜が文化や風土を象徴する存在であることを実感させます。 春の穏やかな晴天の下、多様な桜がみずみずしい光を空に届けていた二条城へ。徳川家康の命により将軍上洛時の居館として建造された壮麗な平城です。大政奉還が行われた場所としても知られているところですね。創建当時は存在した天守や本丸の建物は災害や火災などで現存しないものの、書院造の美しい二の丸御殿は内部の障壁画とともに寛永期(1624〜44)の改築時のものです。本丸の天守台から俯瞰する城内は春一色で、周囲の山々も遥かに望むことができました。シダレザクラのしなやかな桜色を存分に楽しみながら城内を歩きました。堀川沿いのソメイヨシノのさわやかな色に心躍らせながら、春季一般公開中の京都御所へ向かいました。紫宸殿やその前に植栽された有名な左近桜と右近橘や庭園を拝観し、訪れていた多くの人々と喜びの季節を共有しました。
広大な御所内をゆったりと歩きながら、随所に植えられている桜を見かけました。その一つひとつが春をいっぱいに体現していまして、いつまでもその桜色に包まれていたい、眺めていたいという気持ちになります。その花から活力を受け取るかのように、木々は若葉を茂らせ、さらにその活力をいっぱいに野に山に町に広げていって、輝きの季節へと命のリレーをつなげていきます。春空はどこまでも穏やかで、静かで、安らかで、桜色を極上の色調へと導いていました。山々も若草色と山桜の淡い色とを豊かに混合させたような春の慈愛に満ちたような表情を見せ始めます。 御所に北接する今出川通りを越えて、寺町通りを北へ京都の落ち着いた街並みを歩きました。御所の北東の鬼門除けの守護神として造営されたと伝えられる幸神社(さいのかみのやしろ)を再訪しながら、寺町通りに面した本満寺を訪れました。賀茂川に程近い境内も桜がつつましやかな姿を見せてくれていました。豊臣秀吉の御土居建設に伴う都市構造再編により寺院が集められた通りの周辺は寺院が立ち並んで温容な佇まいを見せていました。1410年(応永17)年創建の本満寺は、1536(天文)5年、関白近衛尚通により現在地に移され再興されたものであるようです。
穏やかな寺町を後にして、堤防が桜に包まれる賀茂川端へ進みました。賀茂川を渡る橋は、葵橋。対岸に鎮座する下鴨神社(賀茂御祖神社(かもみおやじんじゃ))と上賀茂神社(賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ))を舞台に開催される葵祭(祇園祭、時代祭とともに京都三大祭の1つ)に因む命名でしょうか。平安京建設前よりこの地を本拠としてきた賀茂氏の氏神である両世界遺産の神社を前にし、鞍馬・雲ヶ畑方面のなめらかな山々を背景にした川の風景は爽快そのものです。 |
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