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シリーズ京都を歩く
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23.桜香点綴の詩 ~2021年陽春の京都を歩く~ |
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第六十二段 洛中・北野から今出川通を東へ ~花が染め上げる京の雅~ 2021年3月24日、嵐山は始まった京都の春の彷徨は、嵐山からきぬかけの路を経て、春の日差しに輝く金閣まで到達していました。春のたおやかな空とやさしい日差しは、地上に存するすべての事物を、極上の錦絵へと昇華させているように思います。金閣寺の門前から東へ、近代化に伴い市電を通すために開通した広幅員の道路である西大路を南へと歩を進めました。
安産の神として信仰を集めるわら天神(敷地神社)の門前を過ぎ歩道を歩く西大路通は、現代都市の商業施設や住宅の面する、交通量も多い現代都市における一般的な幹線道路の趣です。その通りを歩いていると、程なくして緑に覆われた覆われた土塀が歩道により沿ってきます。桜の名所として知られる平野神社の境内が間近であることをそれは示していました。朱塗りの鳥居をくぐり分け入る平野神社の境内は、まさに春爛漫、満開の桜の饗宴に包まれていました。ソメイヨシノをはじめ、シダレザクラやベニシダレザクラなどが乳白色の春色の空に寄り添うようにその桜色の叙情詩を編んでいて、春のこの上のないのびやかな感傷に浸ることができました。 平野神社の境内の桜を観賞した後は、東側に出て昔ながらの木塀や土蔵も残る町並みを歩きながら、今出川通に出て、北野天満宮の門前へと至りました。天神さんといえば、梅を想起させます。梅の季節は過ぎていて、境内に多くある梅の木もその多くは盛りを過ぎていて、若葉が芽吹く中にわずかに花が残るのみでした。春の屈託のない青空の下に鎮座する壮麗な社殿はその季節の移ろいを確かめるように春の日差しを受けて、絶えることのない参詣者を迎えていました。
今出川通の北野天満宮前交差点から南東へ、北野商店街へと続く街路もまた、かつて市電の通った道筋です。アーケードのある北野商店街は、現代においても地域に根ざした台所としての佇まいを残しています。商店街から南へ入る七本末通から、日蓮宗の本山寺院である立本寺へ。現在は4ヶ寺の塔頭寺院が残りますが、明治維新前には20もの塔頭を擁する寺院でした。現在都市となった町並みの中に、本堂、刹堂、客殿などの堂宇が存在して、往時を偲ばせています。立本寺の境内は、ソメイヨシノが咲き乱れる名所としても知られていまして、参道から本堂へと進む境内には、多くのソメイヨシノが桜色をいっぱいに輝かせていました。 立本寺の桜を拝観した後は、今出川通に戻り、今出川通を進む203系統の市バスに乗車し、銀閣寺道バス停で下車しました。西陣の只中から烏丸通を経て御所の北を進み、鴨川を渡河、出町柳駅前をかすめて進む今出川通は、京都市街地における東西方向の幹線道路のひとつとして、多くの交通量のある通りです。白川通に面する銀閣寺道バス停から北へ、白川通今出川の交差点まで進みますと、疎水沿いにソメイヨシノの並木が続く哲学の道へと自然と誘われます。咲き乱れる桜の向こうには、大文字の送り火のひとつとして知られる大文字山の「大」の文字も遠望することができます。東山の山懐に抱かれるようにしてある銀閣寺((慈照寺)は、庭に施された向月台と銀沙灘の造形とともに、その質実な姿に春の穏やかさを湛えていました。
銀閣寺を象徴する創作のひとつである銀閣寺垣を再び見ながら、門前に出て、再び桜が美しく咲く哲学の道へと歩を進めました。東山と吉田山の丘陵とに挟まれた坪庭のような銀閣寺の周辺は、日差しがいつも柔らかに差し込むような印象があります。京都盆地の中心部とわずかに隔絶された立地もまた、このエリアが醸し出す、穏やかさと慎ましやかさを生んでいるのかもしれません。 |
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