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シリーズ京都を歩く
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23.桜香点綴の詩 ~2021年陽春の京都を歩く~ |
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第六十一段 桜色に彩られる景趣 ~嵐山からきぬかけの路の諸寺へ~ 2021年3月24日、嵐山は穏やかな春色の白みがかった空色の下、しずかな早朝を迎えていました。JR嵯峨嵐山駅から南へ、町並みの間から垣間見える嵐山の山肌にも、満開を迎えつつある桜色を認めることができました。ソメイヨシノが花開いてる天竜寺の門前や長辻通を歩きながら、早朝でまだ人通りも少ない渡月橋へ。新緑萌える前の山肌は、山桜やソメイヨシノの桜色が茶色の木々の間にモザイク状にあって、早春の穏やかな情趣をそれは表現していました。
嵐山周辺は、ソメイヨシノやベニシダレザクラが見頃を迎えていまして、嵐山の斜面も点々と桜色が穏やかに染め上げられていました。嵐山は地元との協働で山桜を植樹する取り組みが行われていると聞いたことがあります。保津峡をくぐり抜けてきた保津川が大堰川となり、そして桂川へと名前を変えるこの場所は、古来京都の開発を進めた秦氏が拠点としていた地域です。渡月橋の近くに見える葛野大堰は灌漑のための取水装置として秦氏によってつくられたものと伝わります。桂川が山地から京都盆地へと出る嵐山は、そうした施設をつくるのに敵した場所であったわけですが、穏やかなスカイラインの山々と緩やかな流れとなった川とが出会う嵐山は自然風景としての極めて優れているといえるわけです。季節を越えて情趣を加えていく嵐山は、いつ歩いても心躍らされる風景に出会えます。 保津峡を眼下に見る嵐山公園の亀山地区から嵯峨野の竹林の道を経て、天龍寺へ。境内はシダレザクラが満開を迎えていて、ソメイヨシノやミツバツツジなどの花とともに、まさに桜色一色に包まれていました。京都を訪れる度に必ずと言っていいほど立ち寄る曹源池庭園は春らしいしなやかな青空に照らされて、輝いていました。天然の断層崖による段差を活用し、背景の嵐山を借景とした庭園は、まさに自然をそのまま造形美として取り入れた名園です。その崖上へと続く園路を上ると、境内の豊かな木々の向こうに京都市街地への眺望が開けます。四季折々にこの風景を見ることも近年の標準となっています。
嵐山の春の情景を一通り散策した後、京福電鉄(嵐電)の嵐山駅から帷子ヶ辻駅へ。ここから北野線に乗り換えます。北野線沿線には仁和寺などの名刹があって、観光客にも多く利用される路線です。鳴滝駅から宇多野駅までの間は線路の両側に桜が植えられた、通称「桜のトンネル」と呼ばれる区間があります。電車内から満開の桜の風景を一瞥した後、宇多野駅で下車して桜咲くその区間の現地へと歩を進めました。住宅地の中を流れる御室川を渡り、嵐電の踏切から桜の植えられた区間を間近にできる場所へ。満開となったソメイヨシノのトンネルの間をゆるりと通過する路面電車の風景をカメラに収めました。京都市内には桜とともに季節を感じることができる場所が多くあります。その中にあって、この嵐電の桜のトンネルは、住宅地の中にあることも相まって、桜が日本の日常生活にとって密接に結びついた風物となっていることを実感させます。 桜のトンネルからは福王子交差点へと進み、そのまま東へと歩いて仁和寺の門前へと至りました。春空の下、壮麗な仁和寺の二王門は、暖かな佇まいで参詣者を迎えていました。門前は京都市街地と嵯峨野や周山方面へと通じる主要な交通路(一条通)にあたることから比較的交通量が多いのですが、門前から嵐電の御室仁和寺駅までの街路を経て、雙ケ岡の丘を望む風景はとてもたおやかで、私も好きな景色のひとつですね。仁和寺庭園を拝観した後、広大な境内を進みます。京都でも遅咲きとして知られる御室桜は、果たして咲く初めの状況で、多くの木々はまだ花を付けていませんでした。見頃を迎えていたソメイヨシノは広大な境内にいくつか咲きそろっていまして、その穏やかな桜色は、金閣寺方面へと続く市道「きぬけかの路」へと進んでも点在していました。石庭で有名な龍安寺でも、境内の鏡容池を中心に見事なソメイヨシノや枝垂れ桜があって、春の穏やかな空色に彩りを添えていました。
御室仁和寺を開山した宇多天皇が、「夏に雪を見たい」と請われて、白衣を掛けてお慰めしたという伝承から、別名「きぬかけ山」とも呼ばれる衣笠山のたおやかな山容を眺めながら、竹林や山林などに穏やかに包まれるようなきぬかけの路を歩きます(きぬかけの路の名もこの故事に因み名付けられました)。きぬかけの路が北大路通に行き着く場所には、鹿苑寺(金閣)の境内地が広がります。春のつつましやかなきらめきを帯びた金閣の結構は、四季折々のしなやかさを秘めて、周囲の北山の自然美に溶け込んでいるように感じられました。 |
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