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新潟・天地豊穣
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#10 春の村松公園を歩く 〜桜に彩られた小城下町近傍の風景〜 2014年4月19日、新潟県下越地方の山沿いに位置する旧城下町、五泉市村松地区を訪れました。同地区にある村松公園は「日本さくら名所100選」のひとつに選定される桜の名所で、訪問したこの日はまさに満開、見ごろを迎えていました。天気は時折青空が望むものの灰色の雲が空を覆っていまして、やや肌寒く、冬の日本海側のエッセンスもやや残しているようにも思われました。
日本における都市発達史において、江戸時代における藩政支配は重要な画期の一つとなっています。日本各地が幕府の直轄領(いわゆる天領)などを除いて「藩」という、地方統治組織の中に組み込まれ、それぞれの藩政の中心となる城下町を中心とした統括機構が存立、藩の規模に応じた城下町が形成されて、これらの城下町が、今日存在する大半の都市の礎となりました。そうした状況下にあって、明治以降の産業発達史の地域差や、主要交通網との距離に応じ、必ずしも規模の大きい都市とはならなかった事例も少なからずあります。一方で、そうした歴史的背景は旧城下町としての昔ながらの町割りや家並み、城周辺の建造物等をよく保存させる方向に寄与して、その昔懐かしい風景は、今日多くの人々を魅了することとなっています。今回訪れた村松の町も、広い意味ではそうした都市群のひとつであり、藩政期さながらの中心性に対応した町場と、穏やかな街並みが随所に残されています。そうした町のたおやかさを象徴するように、村松公園はあざやかな桜に包まれていました。 公園は村松城下町の東、愛宕山の北東に位置しています。小高い丘に抱かれるような公園内には野球場や陸上競技場もあり、地域のスポーツ広場としての役割もあるようです。そうしたスポーツ施設の間の街路にもふんだんにソメイヨシノが植栽されていまして、山すそを彩るソメイヨシノの桜色と、まだ若芽が生じたばかりであわくさみどり色に染まり始めた丘陵とが春のおもむきのあるグラデーションを構成していまして、訪れる人々にみずみずしい感動を与えていました。ソメイヨシノのほかヤマザクラ系の濃い桜色を呈する桜や枝垂桜も華を添えていまして、園内の水場にはミズバショウも美しい花を咲かせていました。
公園の北側の入口には愛宕山の山上に鎮座する愛宕神社の鳥居が建てられています。石段を登り、愛宕神社へ向かいました。境内近くの展望台からは、北側に広がる蒲原平野の田園風景と、五千市街地の街並みを美しく眺望することができました。間もなく田植えの時期を迎える水田のある風景はどこまでも雄大で、公園を埋めるような桜の向こうに、たなびくように展開していました。そして、仲春の和やかな風景に、新緑、盛夏、実りの秋、そして凍てつくような冬、四季それぞれの麗しい風景を想像しました。 村松城下町を中心に存立した旧村松町は、2006(平成18)年に五泉市と合併し現在に至ります。町を取り巻く情勢は大きく変わりましたが、静かな山際の小さな町場が擁する公園は穏やかに時を刻みながら、人々にそっと寄り添って、慎ましやかに春の喜びをかみしめているように感じられました。 |
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