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東京優景 〜TOKYO “YUKEI”〜
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#71 初夏の高尾山散歩 〜多様な自然と向き合う登山コース〜 (八王子市) 2018年6月2日、入梅間近の晴天に恵まれた高尾山を再訪しました。前回の訪問は厳冬下でしたので、今回は緑に包まれた自然に溢れる登山を経験することとなります。JR高尾駅から京王線へ乗り換えて高尾山口駅へ。ケーブルカー駅まで続く飲食店や土産物店が並ぶ道を進みます。今回はケーブルカーやエコ-リフトは利用せず、徒歩にて「1号路」と呼ばれる登山道へと向かいました。登山道の入口には高尾山別院不動院があり、参詣者を迎えていました。
1号路の登山道は、石畳の上りやすい道のりで、穏やかな森に覆われていることもあり、ほとんど木陰の下を歩いて行くことができます。沿道にはカエデの木も多くて、秋には鮮やかに紅葉することが想像されました。道には時折山上へと上る商用の自動車も通過するため、注意が必要です。緩やかな上りの後は、つづら折りにヘアピンカーブを描きながら急登を要する場所もありまして、油断をしていると息が切れる道のりです。沿道には青銅製の三十六童子像が建立されていまして、今も昔も高尾山が信仰の山であることを実感させました。途中、1号路を離れ、金毘羅台園地へ向かう山道を進みました。階段が続くルートの先には、金毘羅社の小さなお社と、都心方面への眺望が利く展望台がありました。この日は靄がかかり視界が十分ではありませんでしたが、八王子市街地の向こう、多摩丘陵越しに都心方面への視界が広がるようでした。 すっかり緑が濃くなった森の中を進む金毘羅台ルートから1号路へ戻り、程なくしてエコーリフトやケーブルの高尾山側の駅のある一角へと到着しました。1号路をそのまま歩いて行く人の流れに、それらの乗り物を利用した人々が合流し、薬王院へ向かう人々の数が多くなります。たこ杉の前を過ぎ、童子像がある参道を歩きますと、薬王院の山門である浄心門へと至ります。この浄心門の場所から分岐し、山の北側をループして高尾山駅の展望台辺りに出て、今度は山の南側を進んで再び浄心門へと戻る、霞台ループコースと呼ばれる登山道があります。これは2号路と呼ばれるコースで、高尾山の尾根筋を進む1号路の北側の斜面と南側とで、まったく違う植生の違いを観察できる道筋です。北側は落葉広葉樹林であるのに対し、南側は暖地性の常緑広葉樹林であることがはっきりと確認できます。高尾山の辺りがこれらの植物相の違いを分ける気候の境界にあたるようで、そのわずかな違いを規定することに新鮮な驚きを覚えます。
高尾山をつくる森の秘密を確認できる2号路のループコースを一周して浄心門へ戻った後は、1号路に復帰し薬王院への参道を歩きます。途中、階段を上る男坂と、ゆるやかな坂道を行く女坂に分かれる場所を通過しますと、杉並木が並ぶようになり、さらに歩を進めていきますと、高尾山薬王院の門前に到達することができました。薬王院の境内は、森厳さを帯びた杉の木立の佇まいを緩和するように、新緑が目に鮮やかなカエデの木々が多くありまして、輝きに溢れた青空のしなやかさと呼応していました。空に浮かぶ雲は太陽の光を透かして初夏らしいさわやかな表情を見せていまして、深緑から黄緑へ遷移するこの山奥の寺院の森がつくる空隙に浮かんでいました。 山門から石段を上って仁王門をくぐり本堂へ。さらに本堂脇の石段を上って、薬王院飯縄権現堂、高尾山不動堂といったお堂を訪ねて進みますと、その道筋は高尾山頂へとそのまま続いていきます。山頂まではほぼ緩やかな山道で、初夏のこの日は、みずみずしい緑に覆われた樹冠の下を、ゆったりとその涼やかな雰囲気を感じながら歩いて行くことができました。初夏の輝かしい日射しが眩しい山頂からは、新鮮な緑色が、青空と雲の峰とによってさまざまなグラデーションを見せる、たおやかな山上の風景を堪能することができました。山頂での小休止後、山頂付近を一周する5号路のループコースを辿りました。自然林に加えて、一部人工的に整えられた林もあるコースは、人々が山林と関わってきた経過と、信仰の対象として長い間大切に残されてきた高尾山の自然の素晴らしさとを実感させる道のりでした。
5号路を一周した後は1号路を薬王院へ戻り、杉並木の下を辿りながらエコーリフトへと進んで、高尾山口へと戻りました。高尾山には、ご紹介したメインルートの1号路、2号路と5号路のループコースのほか、3、4、6のルートと、稲荷山コースと呼ばれるコースも存在していまして、それぞれに特色ある自然環境を感じることができる自然研究路が整えられています。今後も、四季折々に多様な姿を見せる、バラエティに満ちた高尾山の自然を探勝してみたいと思わせる、今回の高尾山訪問となりました。 |
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