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関東の諸都市・地域を歩く
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#177 三崎・城ヶ島から葉山へ ~三浦半島の風光に触れる~ 2020年11月26日、濃霧に包まれた早朝の地元を出発し、午前10時過ぎに。神奈川県の京急・三崎口駅に到着しました。晩秋から初冬にかけての朝霧の朝はその日の天気がよい証拠で、果たしてこの日も素晴らしい晴天に恵まれるフィールドワークとなりました。屋根のない2階建ての「京急オープントップバス三浦」に乗車し、三崎の町の先に浮かぶ城ヶ島を目指しました。視界が良好のバスの上からは、三浦半島の台地上に広がる大根畑や、三崎の町並み、そして相模湾のパノラマなどを楽しむことができます。城ヶ島大橋を越え、島の西側の飲食店が集まるエリアまでバスは運行されます。
城ヶ島は三浦半島の南、漁港を擁する三崎の対岸に防波堤のように浮かぶ周囲約4キロメートルの島です。その海岸線の表情は南と北で大きく異なっていまして、太平洋からの海風の影響を大きく受ける南岸には集落や漁港は存在せず、海食崖の卓越した景観が広がります。漁村的な町並みを抜けて坂道を上り詰めますと、城ヶ島灯台へと行き着きました。1870(明治3)年に設置された灯台は、1923(大正12)年の関東大震災で倒壊しましたが、1926(大正15)年に改築されました。北側には城ヶ島の家並を経て岬へと続く風景が俯瞰できます。南側は岩石海岸の荒々しい風景が卓越していて、茫漠たる太平洋が広がります。海岸段丘上の段丘面を東西につながるハイキングコースを進んでいきます。 笹原や背の低い灌木以外ない植生が、城ヶ島南岸における自然環境の厳しさを物語ります。海蝕洞穴の「馬の背洞門」も、奇勝として、岩石海岸の続く風景にアクセントを与えています。島の東岸は駐車場も整備された県立城ヶ島公園として整備されています。園内からは三浦半島の沿岸を経て、房総の山並みを望むことができます。城ヶ島の豊かな風光を巡った後は、再び城ヶ島大橋へと進み、今度は徒歩で三崎の町並みへと向かいました。橋の上から望む海峡の海はどこまでも澄んでいて、城ヶ島に抱かれた漁港の広がりをよりしなやかなものにしているように感じられます。
三崎の町の東、狭塚川(さつかがわ)が流れ込む入り江は、調べてみると北条湾と呼ばれているようですね。その北条湾の入り江にはたくさんの漁船が舫ってあって、穏やかな初冬の海面にその船体を身を任せていました。日の出交差点から県道をそれて三崎の町並みの中を進む市道に入ります。土蔵造りの建物も混じる昔ながらの町並みには、日常生活に必要な洋品店や飲食店などが混じって、漁港として発展してきた地域性を実感させます。寺院や神社が立地するのは石段で海岸段丘崖を上がった先にまとまっていまして、本瑞寺の境内からは三崎の穏やかな家並を一望することができました。本瑞寺には鎌倉時代、桜の御所と呼ばれる桜の名所が存在していたことが、設置された表示板によって紹介されていました。 三崎下町と呼ばれる、古くからの三崎の中心市街地を歩いて、三浦郡の総鎮守である海南神社へ。神社へとつづく参道にも穏やかな町並みが連続していまして、漁港を擁する市街地の喧噪を今に伝えるような風景であるように感じます。訪れたこの日は平日だったのですが、多くの店舗がシャッターを閉めていたのが気になりました。交番のあるロータリー状の街路があるあたりから港に近い場所にある「うらりマルシェ」のあたりは、マグロで有名な三崎の町を志向した観光客も多くて、商業集積も一定数認められることもあって、町全体の静けさとの対照が、我が国における多くの地方都市が直面している問題の一端を象徴しているのかもしれないなと感じさせました。
三崎口駅前までバスで戻り、午後の日が傾きつつある時間の間、横須賀市民病院バス停から下車して、三浦半島の西海岸へと進む国道134号を歩きました。相模湾に面する海岸沿いには、立石や長者ケなどの奇岩や半島があって、しなやかな風光を目にしながら進むことができました。夕日が眩しい海辺はこの上のないきらめきに満ちていまして、横須賀から葉山へと辿るこのルートに、多くの人々が憧憬を寄せる色彩を確かめました。葉山御用邸に隣接する葉山公園に至って夕刻が迫ったため、園内を散策しながら、改めて葉山の佳景に触れました。徐々に藍色に染まる空に浮かぶ月影の白は、どこまでも澄み渡っているように感じられて、三浦半島の穏やかな初冬の一日の彷徨を総括していたように思われました。 |
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