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シリーズ京都を歩く
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6.東山から伏見・宇治へ |
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第十四段 東福寺界隈
8月22日朝、JR東福寺駅を出発して東山から伏見方面への散策をスタートさせました。京都駅からも程近く、行政上も東山区の一部となるエリアであるものの、JR線や新幹線という強力なエッジの存在により、一見しますと東山というよりは洛南の延長上のような印象も受けます。五条通から南へ、伏見区まで一丁目から二十二丁目にもなる町名を伴いながら連続する本町通も、これらの鉄路によって自動車道路としては寸断されてしまいます。本町通は伏見区内に入りますと「深草直違橋」という町名に変わりまして、これまでとは逆に十一丁目からカウントダウンして伏見方面へと続きます。伏見(伏水)街道とも呼称されるこの通りは、伏見を経て大和(奈良県)方面へと連絡する通路として、古来より要路であったのだそうです。現在の本町通は住宅地の中を進むこぢまりとした道路となっていまして、日常生活の中に穏やかに溶け込んでいるように感じられます。
九条家の始祖兼実の孫道家が1236(嘉禎2)年に祖父の菩提寺創建を発願したことに始まる東福寺は、奈良の東大寺と興福寺にあやかってその寺号としたとされています。東大路から南へ、約5万坪(16.5万平方メートル)にも及ぶという寺域を、数々の塔頭寺院の立ち並ぶ参道を進んでいきます。残暑の季節、成熟したカエデの緑は、盛夏の輝きをいっぱいに凝縮させたような、極上のきらめきのなかにあるように感じられます。境内を渓谷のように貫く臥雲橋まで至りますと、京都でも随一の紅葉の名所である境内のようすを概観できます。ここが一寺院の境内かとにわかには信じがたいほどに緑に溢れた眺望の中、谷に架かる通天橋が緑の海の中に浮かんでいるように見えます。紅葉の美しさは言うに及ばず、新緑の頃も命萌えいずる活力に満ち溢れるような、躍動感のある光に満ちた色彩に塗りこめられるのだろうと想像がはたらいてまいります。
伏見街道(本町通)を見下ろす恰好の街路を、伏見方面へと歩むルートは、緑に溢れた閑静な住宅地の中を縫うように続いていきます。西側へ視界が開ける部分では、鴨川に向かって緩やかに下っていく地勢が穏やかに見て取れまして、山麓の高台から見下ろす京の市街地の景観がたいへんに印象的です。両脇に緑を携えた泉涌寺道からの眺めや東福寺通天橋の渓谷美、そして著名な清水の舞台など、こうして町をゆったりと俯瞰できる景観は、東山エリアに共通する地域性といいますか、文化遺産といってもいいものなのかもしれません。こうした東山の風景が、有名な寺院や町並みの中のみならず、ごくありふれた住宅地にあっても体現されるところが、東山の凄みなのではないかなとも思われます。この地域にとっては、それが普通であり、日常であるわけです。
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