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シリーズ京都を歩く
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11.真朱明浄の趣 〜2011京都紅葉散歩〜 |
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第三十一段 東山・洛北の紅葉をめぐる(後) 琵琶湖疏水のほとりを東へ、南禅寺門前へ進みます。春は桜も美しいインクラインを横に見ながら、南禅寺三門へ。穏やかな松林の中にある境内は紅葉が美しく、寒空の下凍える空気を温めるような輝きであふれていました。京の三大門や日本三大門の一角をなすともされている三門の上からは、紅葉に映える境内はもちろんのこと、松の海の向こうには京都の市街地、さらには背後の山並みまでもが美しく眺望できました。
南禅寺を訪れるたくさんの人の波をかき分けながら、境内を北に抜けて禅林寺方面へ。禅林寺は一般に「秋はもみじの永観堂(禅林寺の通称)」として知られます。そのキャッチフレーズのとおり、訪れた日は寺の外からも境内の鮮やかなカエデの林が見えていまして、塀の上の瓦に真っ赤なカエデの葉が載っているようすは、季節の情趣そのものでした。禅林寺を過ぎ、北へ少し進んだ路地を東へ、ゆるやかな坂道を歩いていきますと、哲学の道の南の入口に至ります。東山の山裾を穏やかに流れる琵琶湖疏水分流に沿った散策路です。京都でも有名な観桜・紅葉狩りの名所であることは言を俟ちませんね。私も年始や桜の季節などにこの場所を訪れていますが、山に接した清浄な雰囲気、高台から望む寺院の甍を介した街並みの俯瞰風景、そして四季折々ののびやかな植物の美しさが訪れるたびに新鮮な感動を呼び起こしてくれます。赤いカエデの木、オレンジ色で赤く染まり始めた木、クスノキなどの常緑樹、疏水の静かな流れ、そして東山のやさしいまなざしのような稜線が混然一体となって見る者の心を揺さぶります。 哲学の道の散策をしばらく楽しんだ後、やはり紅葉の名所として知られる真如堂へ向かいます。西へ、なだらかな坂を下り、黄葉したイチョウ並木の白川通りを越え、白川を渡って吉田山の南麓にあたる坂道を上って同寺の境内へと到達しました。真如堂は正式には真正極楽寺(しんしょうごくらくじ)と称します。天台宗の寺としては京都市内では最大規模の本堂を擁します。984(永観2)年、比叡山延暦寺の僧戒算(かいさん)が、延暦寺の常行堂にあった阿弥陀如来像を東三条院藤原詮子(せんし)の離宮に移し安置したことが始まりとされます。白川の谷を挟んで高台にあるため、東山の稜線を借景とした「涅槃の庭」や、境内を埋めるようなカエデの紅葉がとても美しく、三重塔を含めた風景は京都らしい雅趣を帯びているように感じられました。
真如堂から今出川通に出て、バスで出町柳に移動、そこから叡山電車で岩倉駅に向かい、散策を再開しました。岩倉地域は地域を横断する叡山電車の鉄路より南は京都市郊外の住宅地として開発が進んだエリアのようで、それは京都国際会館の建設に伴いそうした郊外ベッドタウンの建設適地としての価値が高まった結果であるようです。地域には京都精華大などの文教施設もあって、文教地区としての一面も認められます。一方、鉄路の北側は住宅地としての展開も認められる一方、水田や畑地としての土地利用も広く認められて、間近に迫る山並みの姿も相まって、京都市街地北縁の農村的な地域として存立してきた経緯も垣間見られます。岩倉川のゆるやかなせせらぎに沿って北へ、軽やかに散策を楽しみました。 1862(文久2)年から1867(慶応3)年まで岩倉具視が幽棲したという旧宅が残る一角を過ぎ、「床紅葉」(床に紅葉の色が反射する様を表現したもの)で知られる実相院へ。1229(歓喜元)年、静基(じょうき)により開基されました(元天台宗寺門派門跡寺院)。宮殿・御車寄など、東山天皇の后・承秋門院の薨去に際し大宮御所の建物を下賜された建造物が現存する数少ない女院御所ともいわれています。池泉回遊式庭園、枯山水の石庭ともに最盛期を迎えた紅葉が実に見事で、上述の床紅葉もたいへん美しいものでした(床紅葉は撮影することができません)。新緑の「床緑」もまた格別なものであるそうです。
岩倉から出町柳に戻り、下鴨神社・糺の森の風情を楽しみました。市街地に近い立地のせいか、まだまだ緑の葉が多く残る木もある古来からの原生林は、応仁の乱などによる滅失を乗り越えて、同神社の境内林として今日まで息づく京都の生き証人です。折から降り出したにわか雨に濡れながら、足元を洗うような枯葉の参道を歩いて、京都の歴史と冬の訪れの雰囲気とが刹那シンクロするような錯覚に陥りました。その後は、京阪電車で一路南へ飛び、東山屈指の紅葉の名所・東福寺の通天橋に立ち寄りました。洗玉澗(せんぎょくかん)と呼ばれる渓谷を覆い尽す紅葉は筆舌に尽くしがたい煌びやかさで、この日も午後3時過ぎという時間帯でしたが溢れんばかりの観光客がそこを訪れていまして、京都の「秋」の風景に感嘆していました。 |
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