Japan Regional Explorerトップ > 地域文・近畿地方 > シリーズ京都を歩く・目次
シリーズ京都を歩く
←第三十二段のページへ |
第三十四段のページへ→ |
||||||||||||||||||||||||
12.蕭条寂光の |
|||||||||||||||||||||||||
第三十三段 嵐山から嵯峨野へ 〜冬日にともる紅葉の煌然〜 2012年12月1日、前年に引き続き、紅葉がたけなわとなった京都を訪れました。夜行高速バスで到着した京都は朝からどんよりとした曇り空で、時折時雨模様となる、初冬の京都らしい1日であったように思います。前年は東山を中心に巡っていたこともあり、この年は嵐山から嵯峨野へ至るルートをまずは辿ることにしました。JR京都駅から嵯峨野線で嵯峨嵐山駅へ移動し、早朝の嵐山を散策しました。
早朝の嵐山は人影も少なく、みずみずしい空気のたゆたう清涼な空気の中にありました。渡月橋の北詰にはシーズンには一際きれいに色づくカエデの木があり、その木越しに眺望する嵐山や渡月橋の風景は嵐山を象徴する佳景のひとつとなっているように思います。渡月橋から下流方向に聳える比叡山の山容を見通す景色もまた京都らしい要素を多分に含んでいます。薄曇りの空の下で研ぎ澄まさえるような紅葉がかすかな輝き見せる嵐山と、東方に在って徐々に光量を増す朝日に照らされる比叡山は、晩秋から初冬へ、移り変わる季節の情趣を象徴しているようにも思われました。 嵐山の紅葉や山々の姿を観た後は、天龍寺北の竹林の道へ進みます。嵯峨野における有名な観光地として、一年を通して多くの観光客が訪れる竹林の道も、午前8時過ぎという時間もあって、訪れる人はまだほとんどありません。小路の両側に屹立するおびただしい竹が醸し出す風景は、引き込まれるような森閑さがありました。小路の傍らには花灯路で使用される灯篭が置かれており、冬の夜のほのかな明かりを想像しました。青竹が風でさらさら揺れる音が、冬の朝の静かさをいっそう際立たせます。天皇の代理として伊勢神宮に奉仕する斎王が伊勢へ向かう前に身を清めた場所と伝わる野宮(ののみや)神社も鎮座しています。
野宮神社から竹林の道を西へ進み、大河内山荘あたりから北へ曲がり、小倉山麓を辿る道筋は四季折々の豊かな景観を楽しむことのできる味わいのある散策ルートです。小倉池を左手に見ながら紅葉の美しい木々の間を抜けて、常寂光寺の門前まで続いてきます。常寂光寺(日蓮宗)は、境内全体が木々に覆われる紅葉の名所として知られます。1596(慶長元 )年、大本山本圀寺十六世究竟院日ワ辮lが、この地に隠棲して開創しました。嵯峨野を見下ろす風雅から、天台四土にいう常寂光土の観があるところから寺号が採られとされているようです。門前から続くゆるやかな下りの参道も色づくカエデが鮮やかなアーチをつくっていました。時折時雨の雨が紅葉を地面を湿らせて、新鮮な冷気が初冬の雰囲気を一層強く演出します。 嵯峨野の原風景を彷彿とさせる落柿舎周辺ののびやかな景色を楽しみながら、特色ある奥嵯峨の寺院を訪ねます。二尊院(天台宗)は、本尊の「発遣の釈迦」と「来迎の阿弥陀」の二如来像にその寺号の端緒を持ちます。伏見城の役位門を移設したと伝わる総門を抜けますと、「紅葉の馬場」と呼ばれる、楓並木を配した美しい参道が目の前に広がります。祇王寺(真言宗)は、山のあわいにひっそりと佇むようにしてある庵のような茅葺の結構が印象的です。祇王寺は平安時代に法然の弟子良鎮が「往生院」として開創し、後に祇王寺と呼ばれるようになったと伝えられます。平家物語で、清盛の寵愛を受けながらも仏御前により清盛の心が離れてしまったため母や妹に出家し移り住んだ逸話でも知られます。元は往生院の子院「三宝寺」と称していた滝口寺は、やはり平家物語の斎藤時頼(滝口入道)と建礼門院の侍女横笛の悲恋の寺として昭和初期に再興されています。鮮やかな紅葉に包まれながらも、初冬のやわらかな陽の光を受け、木々の影は穏やかに風景に明暗を与えていて、歴史の陰影を滲ませているように感じられました。
午前11時前となり、紅葉を求める環境客も徐々に増え始めた嵯峨野の集落の中を嵐山方面に戻り、嵐電嵐山駅から北野白梅町駅まで移動し、北野天満宮へ。
史跡御土居のもみじ苑での紅葉を嘆賞しました。豊臣秀吉が洛中洛外を分ける境界として京を取り囲むように築いた土塁である「御土居」が北野天満宮の境内に残されており、紙屋川に沿った御土居一帯には自然林が残されて、その後に整備されたものを含めた約250本の楓が、華麗に錦に染まっていました。 |
|||||||||||||||||||||||||
←第三十二段のページへ |
第三十四段のページへ→ |
||||||||||||||||||||||||
このページのトップへもどる シリーズ京都を歩く目次のページへもどる ホームページのトップへもどる |
|||||||||||||||||||||||||
(C)YSK(Y.Takada)2003-2016 Ryomo Region,JAPAN |