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シリーズ京都を歩く
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15.暗夜の絢爛、層巒の雅致 ~2014年京都紅葉選集~ |
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第四十一段 嵐山・東福寺の紅葉 ~紅葉に染める夕景~ 2014年11月23日、三尾と呼ばれる栂尾(高山寺)、槙尾(西明寺)、高雄(神護寺)と回って美しい紅葉と山並みが織りなす風景を確認した私は、再びバスに乗って京都市街地方面へ戻り、壮麗な二王門が目を引く仁和寺の門前でバスを下車、京福電気鉄道(嵐電)の御室仁和寺駅へと進みました。二王門の前からは繁華な交通量のあるバス通りを介して御室仁和寺駅前へと一直線に道路が延びています。純和風の駅舎と松並が続く参道、その先にある二王門という風景は、ここを訪れる人々に、変わらぬ京都の風趣を伝えています。
住宅地の間を縫うように進む電車を乗り継ぎ、嵐山へ。多くの人出で混雑する通りを南へ歩いて、渡月橋へと向かいました。午後2時を過ぎ、やわらかな冬の太陽はちょうど嵐山の山の端をかすめるような位置にあって、嵐山の山肌を陰らせていました。嵯峨野一帯を開発した秦氏が設けた堰(葛野大堰)に由来する「大堰川」の名称を部分的に関する桂川の流れは、そんな冬の日差しそのままの穏やかさで河床の石を洗っていました。斜面を埋める木々の紅葉も徐々に進んでいる印象で、やわらかな日光がスポットライトのようにそれらを包む様子は、得も言われぬ季節感を胸に響かせるようでした。 間近に迫る嵐山の佳景、その山裾を渾々と流れゆく桂川の清流、その流れの彼方にたなびくような比叡の山並み、それらのすべてが渡月橋からは最大級の美しさで眺望できます。その光景は、四季それぞれに情趣を醸し出す京都の縮図そのものであるようにも感じられます。渡月橋を渡りきり、右岸側から橋を見通しますと、丸みを帯びた姿が特徴的な小倉山や、その東に連なる山々を、芋を洗うような人が行き過ぎる橋越しに望みました。この日最初に訪れた三尾も、その視界の中にあることもふと頭をよぎりました。渡月橋北詰にあるカエデは毎年のように真っ赤に色づいていまして、雑踏の中一服の清涼剤のようでした。
JR嵯峨嵐山駅から京都駅へ、そのまま東福寺駅へと移動し、東山随一の紅葉の名所、東福寺へ。京都駅を南東へ離れ、鴨川を渡って程なくして到着する東福寺駅は京阪線との乗換駅でもあるため、狭い構内は紅葉シーズンともなりますと大変な混雑となります。駅前を通過する本町通(伏見街道)を南へ、東大路通(九条通)の高架下をくぐり進みますと、塔頭寺院が並ぶエリアへと至ります。白壁が続く通り沿いには趣のある山門も並んで、色づいた紅葉が白壁の上に錦を織りなす姿は、まさに初冬らしい雅趣に満ちていました。 さらに境内を南下しますと、臥雲橋と呼ばれる屋根のついた木橋に行き着きます。ここから境内を眺めますと、見事に色づいたカエデの木で埋め尽くされた渓谷の向こうに、東福寺境内の通天橋が横たわる様子を確認することができます。京都を訪問する際は訪れることの多い東福寺ですが、この日も目映いような赤や橙の海の中に、色づく過程の黄緑が差し色として混じり合う、この上なく美しい紅葉が、洗玉澗(せんぎょくかん)と呼ばれる渓谷をまさに埋め尽くす風景に立ち会うことができました。夕刻の茜色の空の下、一段と艶やかさを増す紅葉の作りだす美観は、秋から冬へと移り変わる季節の野趣を存分に感じさせるものでした。
三尾訪問から始まり、嵐山そして東福寺へと進んだ今回の行程では、その前夜の北野天満宮・毘沙門堂門跡の紅葉とともに、動から静へ、ドラスティックにバトンをつなぐ生命の遙かなる連鎖を、尊ささえ包摂するような輝きを秘めた色彩によって跡づけるものであったように思いました。自然のありのままの美しさをシンプルに感じながら、寒さが徐々に加わり始めた伏見街道を、東福寺駅方面へと戻りました。 |
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