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シリーズ京都を歩く
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16.2015年・小春日の京都 ~八瀬・将軍塚青龍殿を訪ねる~ |
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第四十二段 八瀬から将軍塚青龍殿へ ~紅葉と眺望の至高~ 2015年11月22日、午前中に兵庫県赤穂市を訪ねていた私は、JRの新快速で京都へ移動し、その夜京都駅を出発する高速バスに乗るまでの間、京都市内の小散策を企てました。3連休の中日に当たるこの日は、紅葉が始まったことも相まって京都を多くの人が訪れていました。
京都駅からバスを利用し、賀茂川と高野川が合流する地点の東岸に位置する交通結節点・出町柳へ。穏やかなせせらぎを見せる川の風景を一瞥しながら、叡電の略称で呼ばれる叡山電鉄線で比叡山への玄関口である八瀬へと進みました。終着駅の八瀬比叡山口駅はその名のとおり比叡山への入口となる駅で、高野川を挟んだ対岸には叡山ケーブルのケーブル八瀬駅があり、それとロープウェイを利用することにより、比叡山の山頂へと向かうことができます。色づく木々に包まれた渓流然とした流れが美しい高野川を渡り、カエデの紅葉の下を歩き、三条実美ゆかりの別荘(「喜鶴亭(きかくてい)」と呼ばれました。茶室の名前として継承されています)を改築した瑠璃光院へ。東山の山並みを借景にした作庭で知られる、紅葉の名所です。この日はこの寺院にも多くの観光客が訪れていまして、門前でしばらく待ってからの訪問となりました。 境内はふんだんに配されたしなやかな木々や地面をしっとりと覆う苔などがそれぞれの輝かしさを庭の中に醸していまして、移りゆく季節の粋を感じさせました。階上から見下ろす風景は山々に包まれているかのような清々しさが心を満たし、またその「瑠璃の庭」を同じレベルで鑑賞する光景は、古来よりこの国で育まれてきた,自然への畏敬と協調を是とする文化に裏打ちされた、どこまでもみずみずしい空気を含んでいました。紅葉の色が床に映る「床もみじ」も自然そのままの風合いを宿す庭の景色に絶妙なアクセントを添えていました。「驛瀬八」というレトロな駅名標が掲げられた八瀬比叡山口駅に戻り列車を待つ間も、山懐の静寂と涼やかさに快く包まれる時間を過ごしました。
初冬の午後は、瞬く間にその光量を減じて、空にえも言われぬ艶やかさを加えていきます。冒頭に記載しましたとおりこの日の夜には京都を離れる予定にしていましたので、急いでもうひとつの訪問先である青蓮院門跡の飛び地境内である将軍塚青龍殿へとタクシーで向かいました。東山山頂に位置するその境内は、桓武天皇が平安遷都の際将軍の像に甲冑を着せて埋め、都の安泰を祈願した場所として知られます。その時に築かれた将軍塚も現存しています。2014(平成26)年10月、将軍塚のあるこの飛び地境内に大護摩堂である青龍殿が建立され、国宝青不動が安置しています。青龍殿の傍らには大舞台も整えられ、京都盆地一帯を広く望むことができる新たな京都の名所として注目が集まっています。 大舞台から見下ろす京都市街地はまさに圧巻の一言に尽きます。京都盆地を一望の下にできる爽快感は何物にも代えられない感動を呼び起こさせました。今立っている東山の山並みが悠然と経の町並みに寄り添って豊かな緑の波を形作れば、それに続く北山や嵐山、西山方面の山稜も美しいスカイラインを延ばして、この千年の都を鎮護していました。三方を穏やかな山々に囲まれた京都の地形が手に取るように把握でき、北西方向に見える御所の緑を中心に展開する都市構造もはっきりと確認することができました。日も徐々に傾き、徐々に鈴さ示唆が加わる時間経過の中で、青から藍色、そして茜色へと鮮やかに変化していく、初冬の京都盆地をしばし、静かに眺めていました。
ライトアップされて紅葉が艶やかに演出された将軍塚青龍殿の夜の風景に触れた後は、徒歩にて山を下りて地下鉄蹴上駅へと到達し、何とかJR京都駅へと帰還しました。夜行バスを待つ間、恒例の巨大クリスマスツリーを観に行き、半日の短い京都滞在を終えました。穏やかな小春日の下の京都は、変わらぬ風雅と優美とを備えていました。 |
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