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シリーズ京都を歩く
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19.冬紅葉、かつ結びかつ散る ~2018年、12月の京都をゆく~ |
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第四十九段 嵐山からきぬかけの路へ 2018年12月1日、夜行高速バスにより到着した早朝の京都は、穏やかな天候の下にありました。日の出から間もない町並みはまだ薄暗く、わずかに営業を開始していた飲食店で軽い朝食を済ませた後は、烏丸通沿いの投宿先に荷物を預け、京都駅から嵯峨嵐山駅へと向かいました。午前8時過ぎの嵐山・渡月橋周辺はまだ人でもまばらで、大堰川の静かな流れの先にある比叡山は、冬らしい乳白色の空の向こうに隠れていました。嵐山は赤や黄色、緑そして葉を落とした木がつくる褐色のしなやかなパッチワークに包まれていまして、橋詰の鮮やかなカエデのスカーレットとの間で美しいグラデーションを見せていました。
嵯峨嵐山駅に隣接するトロッコ嵯峨駅より、嵯峨野観光線のトロッコ列車に始めて乗車しました。JR山陰線の旧線を観光鉄道化したこの路線は、保津峡沿いの美しい渓谷美や紅葉などを楽しむことができる路線として、年間通して人気のある路線です。紅葉の時季は特に多くの集客を集めていまして、切符を求めてたくさんの人が行列をなしていました。亀岡盆地と京都盆地を隔てる山並みを縫うように浸食する保津峡は、川下りの名所としても有名です。そのカーブに沿って進む列車からの風景は、冬の朝の優しい日射しを受けて閑雅な装いを見せていまして、岩石が露出する渓流に温かみを添えていました。 トロッコ列車による周遊を終えた私は、トンネルを直線的に進む現在のJR線によって二度嵯峨嵐山駅に戻り、今度は嵐電に乗り込んで、御室の雅称で著名な仁和寺へと向かいました。鳴滝駅と宇多野駅との間にある桜のトンネルも紅葉に彩られる中、「御室驛」の旧駅名の額が掲げられたままの御室仁和寺駅前から、壮麗な二王門へと歩を進めます。松が植えられた街路の向こうに観る二王門の佇まいや、二王門から双ヶ岡(雙ヶ岡)を望む景色はとても穏やかな雰囲気で、皇室や貴族と深い関わりを持つ寺院の雅趣を演出していました。境内の参道にあるカエデは優美に染まっていまして、晩春に芳しく薫る御室桜の色彩も相まって、国宝や重要文化財に指定される金堂や五重塔などの堂宇のある構図を、豊かな初冬の情景として完成させていました。
仁和寺の門前からは、金閣鹿苑寺前まで到達する市道沿いを散策します。このルートは世界遺産に登録された仁和寺、龍安寺、鹿苑寺(金閣寺)とを結んでいることから従来観光道路と通称されていましたが、現在は緑豊かな散歩道として注目され、「きぬかけ山」の名でも親しまれる衣笠山山麓を通過することに因み、「きぬかけの路」と呼ばれるようになりました。きぬかけ山という衣笠山の別称は、宇多天皇が真夏に雪見をするために山に白い絹をかけたという伝承から着想を受けたものです。2010年春に、御室桜をはじめとした桜を観に訪れて以来の、きぬかけの路を歩いて、龍安寺へと到達しました。石庭(方丈庭園)や知足の蹲踞(つくばい)で知られる龍安寺は、衣笠山の山並みがそのまま連続しているかのような、穏やかな緑に包まれている、麗しい景観でも訪れる人を魅了します。石庭を包む紅葉の風景はもとより、境内の鏡容池の周囲を覆い尽くすカエデの紅葉は筆舌に尽くしがたい美麗に溢れていまして、その風光の先に望む衣笠山の山容も、「きぬかけの路」のイメージに違わない和やかさに満ちていました。 龍安寺の美しい庭園美に浸った後は、きぬかけの路に接してキャンパスを展開する立命館大学の周辺を辿りながら、南に接する等持院へ。等持院は、足利氏の菩提寺として知られ、足利尊氏の墓所も営まれています。南北朝時代の1341(暦応4)年に足利尊氏が夢窓国師を開山として中興して以来、足利氏とのゆかりが深い寺院として崇敬を集めてきました。方丈の前にある庭園は夢窓国師の作と伝えられていまして、書院にゆっくりと腰をかけて、石組みや木々が巧みに配された美しい庭をしばし眺めました。
等持院でのひとときの次は、門前の昔ながらの町並みを通りながらバス通りである馬代通を経てきぬかけの路へと戻り、観光客が徐々に増え始めてきた鹿苑寺前へと進みました。衣笠山のなめらかなスカイラインにより沿うように広大な境内をもつ鹿苑寺の緑に誘われながら、きぬかけの路から同寺の参道へを足を向けました。衣笠山に向かって進む参道も、目に鮮やかなカエデの紅葉が実に見事な風合いを見せていました。 |
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