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シリーズ・クローズアップ仙台
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#94 シリーズ・地下鉄東西線を行く(7) 〜卸町駅から宮城野通駅へ〜 2014年12月23日、開業を翌年に控えていた地下鉄東西線のルートを辿るフィールドワークは、仙台駅より東の部分をターミナルの荒井駅から西へ戻る形で進行していました。仙台都市圏外縁部を切り取るエッジのような位置にある仙台バイパスを渡り、バイパスに接して整備された流通団地「仙台卸商センター」の南を産業道路は進んでいきます。仙台市と一体的な都市圏を形成する多賀城・塩竈市方面と仙台市中心部をつなぐこの道路は、JR線の鉄路をくぐって仙台駅前の東西を連接する新寺通となることから、大変交通量の多い道筋です。卸町駅の場所でも、他の駅と同様に、出入口の工事などが行われていましたが、歩行者よりも圧倒的に多い車の流れの中で、地下鉄施設がどこか埋没しているようにも見えました。卸町一丁目西端の空きスペースのには2018年に大型商業施設が進出する予定です。高度経済成長期、拡大する地域需要に応え誕生した卸商団地も、社会の変容により少しずつその姿を変えようとしているようです。
卸町駅から西へ、宮千代一丁目交差点を左折し宮城の萩大通りに出た後、大和町二丁目交差点を右折しますと、次の薬師堂駅へと進みます。駅名は宮城野貨物線を挟んだ反対側にある陸奥国分寺薬師堂に由来します。聖和学園高校のほか、南にやや離れるものの若林区役所や聖ウルスラ学院英智高等学校なども立地しています。若林区中央部の位置することもあって郊外バスと地下鉄との乗り継ぎ拠点として同駅は位置づけられていまして、駅に隣接してバスプールが設けられることが特徴となっています。宮城野貨物線をくぐり、陸奥国分寺の境内の脇を通過しながら、地下鉄線を跡づけます。従来のバス路線は連坊小路に抜けるために裏柴田町東の三叉路で一度右折し、その後連坊小路に左折するといったクランク状に進む必要がありましたが、地下鉄線整備に伴いこのクランクを解消した新たな道路が建設されるようで、その新しい道路整備に関連した工事も進捗していることがうかがわれました。 連坊小路に入りますと程なくして次の連坊駅へと到着できました。仙台第一高校の北に位置する同駅の周辺でも、道路の一部車線を閉塞しての工事が行われていました。このあたりまで来ますと、周囲は中層のマンションなども点在する切れ目無い住宅地域といった土地利用に変わっていまして、地下鉄駅が一般的に設置される都市景観へと名実ともに遷移しているように感じられました。連坊はかつて陸奥国分寺に連なる塔頭寺院が所在したことからその名のある地名で、北に隣接する新寺地区と共に、仙台城下町東南の寺町を形成していました(拙稿「連坊と新寺を歩く」参照)。
連坊駅を過ぎてからは、地下鉄線は都市計画道路宮沢根白石線を北上、新寺通を西へ進み次の宮城野通駅へと小刻みに曲線を描きながら進んでいきます。宮沢根白石線はその名のとおり広瀬川に架かる宮沢橋まで連結すべく、南に路線を延長する工事が進んでいるようでした。かつての寺町の風情を伝える寺院が多く残りながらも現代的な建築物も林立して現代的な都市景観の方がより比重を増している新寺地区を通り、近年再開発が加速度的に進む仙台駅東口に近づきますと、宮城野通駅の位置へと到達しました。ビルの谷間を貫通する道路の直下に建設される駅は、中央寄りの上下一車線ずつを占用して進められていまして、建物の密度が高い地区における工事の独自性を感じさせました。 宮城野通駅の位置は仙台駅東口からもそれほど離れていないので、仙台駅を利用することも可能ですが、仙台駅が大きい駅であるため、仙台駅で乗り換えをせずそのまま東西線で仙台駅以西へ向かう場合は宮城野通駅を利用した方がよりスムーズにホームまで下りることができそうです。地下鉄仙台駅はJR仙台駅よりも幾分西にずれて設置されているため、仙台駅東口方面利用者への利便性確保のための駅設置であったのでしょうか。これまでも東西線の予定ルートを探索してきて言及してきましたが、この路線は特に東側の末端部において既成の大都市圏域ではない、やや郊外然とした地域を通過するなど、需要量が見込める路線というわけではなく、路線の整備によって地域を開発し都市交通量の抑制を図ろうとする戦略的な路線であると思われます。路線の整備によって地域構造をどのように再編成し、それによってどんなメリットが長期的に見込めるか、市民に十分に説明し、利用拡大を図る必要性が多分にあると思います。
地下鉄東西線の工事の進捗状況を確認した後は、市中心部定禅寺通周辺で開催されている冬の恒例イベント「SENDAI光のページェント」の様子を見に行きました。ケヤキ並木を彩るたくさんの電球は、この年も町並みを美しく、そして暖かく彩っていました。 |
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