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シリーズ京都を歩く
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15.暗夜の絢爛、層巒の雅致 ~2014年京都紅葉選集~ |
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第三十九段 北野天満宮・毘沙門堂門跡の紅葉 ~闇夜を照らす絢爛~ 冬の夜に照らし出された石造りの大鳥居は、この上ない風韻を暗闇に溶け込ませているように感じられました。参道を照らす薄明かりに導かれながら、スポットライトに浮き上がる楼門をくぐり、荘厳な佇まいを見せる本殿へ。この一年の安寧に感謝を、そしてすべての地域のさらなる平穏を祈願しました。静かな境内は参拝に訪れる人々のかすかな喧噪によっていっそう深遠さを増しているように感じられます。
2014年11月22日、高野山訪問を終えた私は、大阪へ戻りそのまま京都へ進み、北野天満宮へ向かいました。境内にその一部が残る「史跡御土居」は自然林が残り、そこは「もみじ苑」と呼ばれ、紅葉の名所として知られています。木々が美しく錦に染まるこの季節は一定期間ライトアップが行われています。御土居へ向かう傍らには、早春には艶やかな芳香に溢れる梅苑があります。祭神である菅原道真にゆかりの梅花はこの時は光に力を与えられた御土居の木々に主役の座を託して、初冬の閑寂の中にその身を委ねているようでした。 御土居には数多くのカエデが生育していまして、土塁の外側を流れる紙屋川に沿って、さまざまな色合いを染みこませた屏風絵を構成しています。朱色にきらめく葉、まだ青葉が優勢の枝、一つの葉の中で黄から赤へとグラデーションをつくってるものなど、一つひとつが極上のつややかさを呈しながら、全体としてきらびやかな絵画として昇華する様は、まさに生から静へと静かに、そして粛々と移り変わる四季という交響曲の一大フィナーレを奏でているようにさえ感じさせます。御土居から見下ろす木々のしなやかさ、見上げた闇夜を背景に吸い込まれそうな流麗さを誇るかのような樹冠の冴えは、ここを訪れるたびに新鮮な感動を胸に呼び起こさせます。この京都という地が歩んできた歴史を思うとき、目の前に展開する自然の目映さは、奇跡というより、寧ろ必然であるといえるのかもしれません。
北野天満宮の紅葉の余韻に浸りながらJR京都駅へ戻り、一駅東の山科駅へ。駅から約1.3キロメートルほど北上した場所にある毘沙門堂門跡へと足早に歩を進めました。こちらでも境内一円を凄艶にライトアップで演出する夜間特別拝観が行われていました。毘沙門堂は天台宗五箇室門跡のひとつとして知られます。寺号は本尊に毘沙門天を祀ることによります。創建(703(大宝3)年)当初は京都盆地北部の出雲路に所在したものの、度重なる戦乱から逃れ1665(寛文5)年に山科の現在地に再建しています。門跡とは、皇族や公家が住職を務めた寺院のことです。後西天皇皇子の公弁法親王(こうべんほっしんのう)が受戒して以降、門跡寺院としての寺格を得ています。 山科のたおやかな山並みに寄り添うような境内を、石段によって本殿へと進みます。急な石段を覆うような紅葉は圧巻の美しさで、光彩に彩られる紅葉のアーチの先には、朱色が目に華やかな仁王門がありました。石段には両側に灯籠が並んで光の列を作っていまして、光と闇によって形作られたアプローチに誘われるように、ただただ絢爛な紅葉の下、ゆっくりと歩を進めました。仁王門の西に位置する勅使門への石段も明かりが灯されていまして、得も言われぬ明るさに満たされた紅葉の下、燦然たる光芒に包まれていました。宸殿から鑑賞する境内や庭園の紅葉も極上の風雅を纏っていまして、雅やかな古都の初冬を心ゆくまで味わうことができました。
毘沙門堂門跡での紅葉を観覧した後は、閑静な住宅地を辿って山科駅から京都駅へ二度戻って、構内に飾られているクリスマスツリーを観に行きました。ふたつの特色ある紅葉の風景を目にした後で眺めるツリーの電飾はどこまでも温かさに満ちていまして、ツリーを見つめるすべての人々に穏やかな充足を与えていました。 |
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